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20代の頃は相当扱いにくいエンジニアだった

丹羽隆之氏(以下、丹羽):今まで偉そうな話や自慢じみた話が多かったかもしれませんが、僕自身もたくさん仕事をしています。最初の自己紹介でも言ったとおり、悪いほうに持っている男なので、その1つを紹介します。

小学生の時からPCを触っていたので、社会人になった時は周りよりもプログラムができました。ちょうど会社でもアセンブリ言語の開発からC言語を使って開発するかたちに切り替わっていくタイミングで、大学でC言語をやっていたこともあり、少し重宝されていました。ただそのせいもあって、恥ずかしいことに20代の頃は相当扱いにくいエンジニアだったと思います。

周りのエンジニアやエンジニア以外の職種の人にけっこうきつく当たっていて、本当に嫌な奴だったと思います。みなさんはそんなことしていませんよね。いずれ痛い目を見るので、そういう人は改めたほうがいいです。

ゲーム業界で実績を積んで転職をした会社では、ゲームはプログラミングスキルが必要なのでスキルだけは一歩抜きん出ていました。それを鼻にかけて周りの人たちに、やれ「仕様書が間違っている」だの「作ったあとから仕様書が変更されると二度手間だ。時間の無駄だ」だのと言っていました。本当に嫌な奴です。そんなことを続けていたら、入社して1~2ヶ月くらいの頃に当時の上長に呼ばれました。そこで言われたことが、人生で大きな転機になりました。

その時に、「丹羽君がプログラムできることはみんなわかっているけど、どんなにできる人でもいずれミスするよ。その時にミスをカバーするのは一緒に働いている周りの仲間なんだ。今のような態度を続けていたら誰も助けてくれないし、いずれ痛い目にあうからすぐに態度を改めなさい」と言われました。

この時、すでに30歳を超えていたので、学生のノリが抜けないというか、赤ちゃんみたいでしたね。これを聞いて自分でも本当に恥ずかしくなって、そのあとからはリスペクトを持って周りの人に接するようにして、「本当にすみませんでした」と謝罪しました。

実際にこの直後、僕は、クライアントの会社に顛末書を出して、直立不動で話をするくらいの大きなミスをやらかしました。本当に首筋が寒くなったんですが、その時に助けてくれたのは同じプロジェクトの仲間でした。「こんな急ぎの案件は彼じゃないとできない」とか「こういうミスもあったけど、製品はすごく良いものです」などと周りが言ってくれて、大きな問題になることなく収まりました。

確かに、一定規模のアプリケーションであれば1人で作れると思うし、1人の天才によって生み出されたアプリケーションは世の中にたくさんありますが、今はどんどんアプリケーションが複雑になって相互にAPIやネットワークが連携して動くようなものが多いので、エンジニア1人でできるものは限られています。

スマホでも、スタンドアローンで動くアプリはもうほとんどありません。他のサービスと連携したり、ネットワークを使っていたり、OSの機能を使っていたり、やはりいろいろな人と連携して仕事ができるようにならないと今後は厳しいと思います。

一番重要なのは「人」である

いろいろ話しましたが、一番重要なことは人だということを伝えたかったんです。人と仕事をする、もしくは人を幸せにするという意識が重要です。また、他人に対してリスペクトを持って接することも重要だと思っています。

実はエンジニア業界はけっこう狭いです。Linuxを作ったLinusさん(Linus Torvalds氏)はコミットに対して以前Fワードを使ったりと、厳しいコメントをしていましたが、最近キレイになって帰ってきました。僕が35歳を超えてもエンジニアとしてやってこられたのは、周りの人や以前一緒に仕事をしていた人が、誘ってくれたり、助けてくれたり、もしくはついてきてくれたりするからです。

ほかにも、海外で仕事をする時や外資系に就職する時には、リファレンスチェックというものがあります。これは僕がCTOと今期のCHROを兼任していることにもつながります。当社はテクノロジーファーストを掲げるITベンチャーではありますが、重要なのはやはり人だと考えています。

そういう意味で、テクノロジーファーストの会社の人事・採用のトップがテクノロジーのトップだという話をCTOから聞いて、確かにそうだなと思ったので、今はCTO兼CHROとしてテクノロジーに加えて人事・採用の仕事もしています。10~20代の時に描いていたコンピューターグラフィックスエンジニア像ではありませんが、テクノロジーに関わって、50歳を過ぎても新しい仕事や挑戦ができているという意味では、35歳定年説は嘘だと思っています。

みなさんにも35歳で終わることなく、35歳を超えてもやりたいことや好きなことに取り組めるエンジニアになってほしいと期待しています。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

司会者:ありがとうございました。チャットに来ていた質問について丹羽さんにお聞きします。「好きなことを仕事にすると嫌いになると聞いたことがありますが、丹羽さん自身にそういった経験はありましたか?」です。