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2021年12月12日、F Venturesは第5回となる、U25向けスタートアップの祭典『TORYUMON ONLINE』を開催しました。第1部では若手起業家と「次世代流起業論」について話すトークセッション、第2部ではスタートアップ6組によるオンラインピッチ、第3部では急成長中のスタートアップ起業家とイグジット経験のある連続起業家らを迎え、『先輩起業家に教わる、PMF後のスケールとチームビルディング』セッションを開催しました。この記事では、第3部のセッション内容をお伝えしたいと思います。
タイトル通り、セッションはPMF(プロダクトマーケットフィット)についてです。PMFとは「自社で提供するプロダクト(製品やサービス)が、顧客の課題を解決できる適切なマーケット(市場)で受け入れられている状態のこと」で、プロダクトを世に出したら最初に目指すべ目標と言えます。
今回、株式会社タイミー代表取締役社長の小川嶺氏、株式会社令和トラベル代表取締役社長の篠塚孝哉氏、株式会社LayerX代表取締役CEOの福島良典氏の3名(順不同、文中敬称略)に話を聞きました。モデレーターはDIAMOND SIGNAL編集長の岩本有平氏が務めています。
ーーまず、自社にとってのPMFとは、というところを伺えればなと思います。
小川: 2018年の8月にスキマバイトアプリ「タイミー」をリリースしたのですが、1年後くらいにPMFしたかなと思っています。40店舗くらいを展開する企業が、全店舗で導入すると言ってくれたんですよね。それまで飲食店では店長の決裁があり、この店舗では使うけど、別の店舗では使わない、などと対応が分かれることがありました。なのに、その企業では経営陣から「全店舗使え」と号令がかかったんです。それくらい既存の採用ツールや派遣を使うよりも、タイミーにベネフィットがあると理解し、推し進めてくれた。そこからは、この成功事例をもとにサービスを広めることができて、売上の8割が飲食業になりました。この頃は月次180%成長を繰り返しているような状況でした。
そこで橋本環奈さんのテレビCMを打って非常に順調に伸びたんですけれど、その4か月後にコロナが来て、飲食の売上が全体の8割から3%に落ちたんですね。当たり前ですけど、飲食店が営業していないので、雇用が生まれるはずもなく。さすがにやばいとなって、すぐにシリーズCの資金調達で13.4億円を確保しました。それで次はどう攻めようか、となりました。
メインは飲食業を攻めていたのですが、インバウンドの問い合わせに物流の会社も入っていました。最初は『物流業界への参入は難しい』と固定観念があったのですが、導入企業が増えていたので、とりあえずヒアリングをしようと神奈川県にある物流倉庫に行って話を聞いたら、すごくニーズがあるなと感じたんです。
そこは小さな倉庫だったのですが、タイミーで毎日10人のアルバイトを呼んでくれていました。飲食店の場合、金、土、日で1人ずつ呼ぶパターンが多いので、1つの物流拠点につき、飲食店10店舗分のポテンシャルがあることになります。それに気づいてから一気に物流を攻めようと、物流部隊を作りました。
PMFしたなと思った瞬間は、飲食業界の時と同じで大手企業が全拠点で導入しようと推し進めてくれたときです。私たちというより、**クライアントがプロダクトを推進してくれる。そのような状況になるまでプロダクトを作り込むことがPMFだと思っています。**だからこそクライアントに向き合って、目の前のお客さんが自然と使いたくなるものを作り込めるかがすごく大事だと考えています。
株式会社タイミー代表取締役社長 小川嶺氏
今は、おかげさまで10月、11月、12月と飲食業が戻ってきていて、飲食業の割合が20、30%になってきたところです。コロナ禍ですごくつらい中でも社内の飲食チームは残して、飲食店との接点を取って、関係構築を続けてきました。その結果、12月に向けてお問合せが一気に増えている状況です。これは非常に良い形でできたかなと思っています。
篠塚: PMFに関しては今の会社ではなく、過去の話を中心にしたいなと思います。以前、「Relux」という高級ホテルや旅館の予約サービスを運営していました。
株式会社令和トラベル代表取締役社長 篠塚孝哉氏
PMFの観点で、ひとつ持ち帰ってほしいと思うのは、サービスによってPMFの定義は違うので、それは注意したほうがいいということです。プロダクトを作る上でサービスのフリークエンシー(利用頻度)を考えるのが重要だなと僕は思っています。例えば、旅行アプリだと年に1、2回くらいしか使わないですよね。少なくとも毎週使うサービスではない。一方で毎日使うサービスもあります。ソーシャルゲームとか、Eコマースの中でも日用品を買うようなものとか。旅行より使う頻度が低いものだと、車の購入や結婚情報サービスとかです。
僕たちの旅行サービスでPMFを感じたのは、創業から2年以上経ってからでした。最初の1年くらいは無風で、2年経ってから1回目使ってくれた方がまた使ってくれる形で売上が積み上がり始めました。そうすると成長カーブは指数関数的に上がっていく状況になります。
なので、サービスのフリークエンシーをちゃんと捉えておいた方がいいです。もしソーシャルゲームで2年粘ってもダメなら当然ダメですけれど、サービスのフリークエンシーが低いのであれば、事業計画もそれによって変わってきます。